運送行為は委託者の意志の延長と知るべし(当社社訓)

今日も元気にお歳暮配達。神沢です。


田舎の配達員は集配先のお客様からいただきものなんてよくあることでして。
昨日はかねこのじっちゃから。白菜、大根、りんご。
今日はおがわのばっちゃから。白菜、大根、赤大根、里芋、ゆず、水菜。
もてもてですね、自分。
年齢限定で。


うん、
お野菜はよくいただきます。


なんでなのかと申しますと、
自分が人気者だからです ちがいます。
自分が田舎の配達員だからですね。


自分が担当している地域(最近主担当をお弟子さんに譲りました)は、
田んぼと畑の地平線が広がる田園地帯でして、
農家の方が多いんですね。
農家の方は商いとしてお野菜を育てているワケなんですけれども、
商いとは別に収穫物をほうぼうへ送られるのです。
息子さんや娘さん、お孫さんやご親戚など。
集荷でお伺いしますとおおむね一度に2件や3件の荷物を預かります。中身はお野菜。
収穫してきたそれらを箱詰めして自分達を呼ぶワケなのですが、
箱詰めした後に残るお野菜があるのです。


そこに自分達が威勢よく元気よく、明るく大きな声で走ってやってくるものですから、


「こんちわー、神沢でーす! お荷物受け取りにお伺いしましたー!」
やあやあよく来なさった。これをもっていっておくれ。
「はい! では! ……(端末入力)……合わせてOO円です!」
はいよ。
「どもっ!」
重たいよ、気ィつけて。
「はいっ!」(担いで荷台へ走って運びます)
元気だねぇ。
「あははっ! それだけが取り柄っすから!」
……かんざわさん、白菜持っていくかい?


こうなるわけでございます。
……残り物には福があるとはよくいったモノでして。



最初は遠慮していたのですけれども、
「いやいいっすよ! 荷物もらってお代までもらっちゃってるのにお野菜なんてそんな」
うちじゃ食べ切れねっからさ。持っていってくんな。
そうお言葉をいただいたら断る方が失礼かと思いまして、
「えーっ! じゃあいいですか!? 申し訳ないっす、ホント!」
(やたら叫んでますがガテン職はノリと勢いで仕事が前提です)
採りたてお野菜をごろごろっといただくのです。


ただいただくのも申し訳ないので食べ方についていろいろとお話をいただいたり。
そして最後は元気よく
「ありがとうございます!」
笑顔は大事。


毎回大喜びしてたら、なんか、きがつくと、
お伺いするたびに神沢用のお野菜が用意されているという。
そんなあんばいでございます。



前述のじっちゃに至っては、
近く通りかかったら声掛けてくんな。なんかあっからさ。
いや、さすがに用もないのに野菜くださいと立ち寄るわけにも参りません。



うん、
こころって大事だよなあと。


このお野菜の出荷、ね?
送料を言ってしまうと都心部のスーパーでも同じ位の量の品が手に入るんです。
でも出荷される方にとってはそうじゃないんですよ。そうじゃないんですね。


家庭菜園やっててわかったのですけれども、
自分で育てて収穫したお野菜を食べて欲しいなと。
そういうこころです。


効率や金額だけをみて、それで考えたら、送らない方が結果として安上がりなんです。
そりゃそうですよね。送料だけで同じモノがどこでも買えるのですから。
「モノは要らねぇ、カネ送れ」
そういう話になっちゃいます。


しかしながら、
こころに乗せた味というモノもあるものでございまして。
都心部に住む息子さん夫婦、娘さん夫婦にお野菜を送るとします。
それは愛しいお孫さんの口にも入るということで。
「これはね? おじいちゃんおばあちゃんがお前のために作ったお野菜なんだよ?」
大好きなおじちゃんおばあちゃんが作ったお野菜ならば、
チビッコさんもニンジン嫌いだピーマン嫌いだ、それもちょっと違う目で見るようになるのでは。



数字だけでははかれないモノ。
そういった品を運んでいると感じた時、
ああ、自分はこの仕事に就いていて良かったなあと思う時があるのです。







余談なのですが、
いやむしろ蛇足になるかも知れませんが、
こういったお野菜ってちょっと特殊です。
実は農家の方、商いとは別の個人用耕作地を持っていらっしゃったりもして。
(全部が全部とは言いませんが)
(聞いた話です)


農協におろす分は肥料だの農薬だの掛けるお金考えて作るけどね、
自分ち用は別に畑作ってやってるさ。
採算度外視。手間ヒマ掛けてさ。


……部外者な自分にさらっとすごいことを、今。
いただいて手にした白菜、実は重量以上にぎっしり詰まったモノが。


「そうなんですかー、あははははは! ごちそうさまでーす!」


特製白菜、か……。



うん。