長所は短所たりえますし、短所は長所たりえます

そこが興味深いところでもあり。神沢です。



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M1911A1 シンガー社製モデル。遊技銃はウエスタンアームズのガスガンです。


コレの実物はというと、
M1911A1の総生産数は175万挺、そのうちの500挺です。
現在ではかなりのプレミアが付いていまして、
(元から米軍に納められた武器は市場に出回ることが少なくプレミアモノです)
戦勝国の武器は戦後も使用されます。日本警察に下ろされて銭形警部も使ってましたよね)
オークションで8万ドルの値が付いたことも。


なんでかというと、
ステキ過ぎたからですね。


第二次世界大戦中、アメリカは国内各企業に軍事物資の生産を命じました。
当時は国家総力戦の時代。
ありとあらゆるメーカーは軍事物資の生産を命じられたのです。


シンガー社は本来ミシンメーカー。
政府から
『キミのトコロは武器とか作ったことがないけれど、やってごらん?』
『ためしに、500挺』
と、注文を受け、作ったのがこのシンガー社製M1911A1です。


出来がね、
ステキ過ぎました。


時は戦時中ですから、
アメリカ政府は質より量が欲しかったんですね。
だから経験のない企業に武器を作らせたワケで。
(それでも、厳しい品質基準はありました。後にミルスペックと呼ばれます)
シンガー製は要求を飛び越えて品質が高かった。
高すぎたのです。


『ためしに500挺作ってもらったけど、やっぱりキミのトコロは向いてないやあ』
と、その後はシンガー社、別の軍事物資を生産することとなります。


たとえ話は数字にて。
ポイント制で考えてみましょう。


M1911A1一挺を作るのには10ポイントあればよかった。
本家コルトや散弾銃メーカーのイサカは10ポイントで作りました。
印刷機メーカーだったレミントンランドあたりは9ポイントくらいで作ってました。
しかしながら、
シンガーは20ポイントくらいかけて作ってたのです。


それだとそれだと、
戦時中は国家総力戦真っ最中、
一千や一万のポイントがあったとしても、
注文先の違いによって、
できあがってくるM1911A1の数が違ってくるわけですよね。


10挺100挺程度ならあまり気にしないでいられるかも知れませんが、
時は既に戦争中です。
一万挺欲しいときに必要なポイント数はどれだけでしょうか?


シンガー社はM1911A1の生産から下ろされます。
野球で言うところのベンチ入り? ……にはなりませんでした。



『初めて作ったにしてはものすごいいい出来じゃないか! こんな出来のモノを作れるのならもっと別のモノを作って欲しいんだ!!』



爆撃機の爆撃照準器を作ることとなります。
爆弾を落とすための、目盛り。
拳銃よりよほど精密な製造技術が必要とされる品です。



そんなわけで。



『向いている』
『向いていない』


ソレはその時その対象にだけ言えることなのではないかと思います。



シンガー社、
ピストルを作るコトには向いていませんでした。
でも、
爆撃照準器を作るコトには向いていたワケです。



組織でも人でも、
『向いている』
『向いていない』
それはあるわけで。



適材適所。



その時その場の判断だけで、
「コイツつかえねー」
ソレはその時の判断で、
だからといって
「コイツ、ダメなヤツだ」
ダメって判断は早計ではないかと。



人に合わせた活躍の場所って、
きっとあるのだと思います。



……まあ、
数が少なければ希少価値ということで値が張る品になりました。
シンガー社製のM1911A1
つい憧れて遊技銃を調達しちゃいましたが。



……
………
…………
調べてみたらシンガー社がその後作った爆撃照準器、
B29に搭載されて日本を焼いてました……。


好きこそもののとは言いますが、
そこまで知るとちょっと複雑な心境です。





うん。