一択問題
「面白い少尉。さすがは学徒らしいきれいなご高説だ。ではこういう話をしよう」
「輸送船が撃沈され、海に放り出された貴様は四人の部下と共に五人乗りの救命ボートに乗る」
「そこへもう一人の兵が泳いで近づいてくる。五人乗りの六人目だ」
「その六人目がボートに掴まればそのボートは転覆。貴様も四人の部下もまた塩水をがぶ飲みする羽目になる」
「そして貴様の手には拳銃が握られている。まさに今そういう状況だ」
「方法はいくらでもあるだろう」
「六人目を撃つか」
「六人目のために四人のうち誰かを撃つか」
「それとも貴様がその高尚な頭蓋を自分で撃ち抜くか？」
「早くしなければ六人目がボートをひっくり返す」
「わかるか少尉、この問題の答には貴様のきれいなご高説は通用しない」
「……貴様は戦争というものを理解しておらん」
うん。
