趣味の独走 拳銃談義
なんでなのと問われましても好きなものは好きなのでございます。神沢です。
ついに、
ついに調達しました!
コクサイの
『S&W M10 4インチ ミリタリーポリス スタンダード』(商品名)
で、ございます。
当然本物などではなく、モデルガン。弾は出ません。
きっかけはこの品、
コクサイが最近リリースしている復刻廉価版なのです。
もともとモデルガンのメーカーでは老舗であり、かつては隆盛を誇ったメーカーさんなのではありますが……、
エアソフトガンブームの頃に製品開発で正直ビジネスとして失敗したり、工場が火災に遭い金型の多くを失ったりで……
『祇園精舎の鐘の声……』と、平家物語の冒頭を彷彿とさせます。
リボルバーのモデルガンではあまり良い思い出がなかったのですが、
最近調達しましたS&W M36 チーフスペシャルの具合がかなりよかったので
同じメーカーの品なら大丈夫かなあと、手を出してみた次第でして。
こうしてみてみますとやはり廉価版、写真映りからして違います。
材質がね、ABS樹脂そのままで、言ってみれば黒いプラスチックそのままです。
自分のようなプラ派発火派からしてみれば懐かしさがありますね。
銃についての解説を少しばかり。
スミス&ウェッソン - Wikipedia
アメリカの大手銃器メーカーでして、設立当初からリボルバーのメーカーとして知られています。
坂本龍馬が愛用していたことでも知られていますね。
S&Wリボルバーは種類が多く、次元大介のコンバットマグナム(M19) ダーティーハリーの44マグナム(M29)など、銃について詳しく知らない方でもその名前は耳にしたことがあるかと思います。
そのなかでM10は、全てのS&Wリボルバーの原点となっている仔なんですね。
具体的には機関部。
S&Wリボルバーの内部構造、その基本原理は全てこの仔が原点です。
この仔の後に開発されたS&Wリボルバーは全てこの仔の改良型です。
使う弾薬の種類や数、使われ方の違いなどによって寸法を変えたり、
素材や照準器の違いなどで派生が産まれています。
「357マグナム弾を撃てるようにしたよ」→M19『.357コンバットマグナム』
「44マグナム弾を撃てるようにしたよ」→M29『.44マグナム』
「サイズを小さくして護身用にしたよ」→M36『チーフスペシャル』
M10開発は古く(1920年代)、歴史のある仔なのですが、
今でも生産は続いており、いかに完成度が高いのかの証明にもなっています。
ちなみにS&Wリボルバーはそれぞれニックネームが付けられています。
上記の3機種、M19、M29 M36『』の中にある表記がそれにあたります。
M10の場合は“Military & Police” ミリタリー&ポリス。
日本のガンマニアでは「ミリポリ」と呼ばれます。
『ミリポリは飽きが来ないね』(花輪和一『刑務所の前』より)
うんうん。ですよねえ。
シンプルでリボルバーとして必要最小限なつくり。
そこから繋がる信頼性。
世界各国の軍隊や警察で採用された事実からも伺えます。
もでるがーん。
モデルガンのモデルガンらしいところ。
銃身とシリンダーには実弾を発射できないようにインサート(鉄板)が入っています。無理にこのインサートを取り払おうとしますと……プラスチック素材なモデルガン、まず間違いなく砕けます。
仮に上手に取り払えたとしても……実弾を装填して発射しようものなら弾が飛ぶ前に握った手の指が飛ぶと思います。材質の強度を考えればすぐにわかることで。それはもう不正改造の真性拳銃などではなく、モデルガンのかたちをした手榴弾です。ぜひにやりたいのなら自分は止めませんが、警察病院→留置所→法廷 火を見るよりあきらかです。
38口径専用シリンダー。
シリンダーの下の方。
隙間が空いて向こう側が見えますよね。
ここが、
こーこーが、
オイシイ。
垂涎モノです。
以前お話しした覚えがあるのですが、
357マグナム弾は38口径なんですね。
38口径の弾薬、その発射薬(パウダー)を増量したモノが357マグナムなのです。弾丸を撃ち出すための火薬を増量している分、薬莢の全長が長くなるのです。
この写真のように、シリンダーの全長を短くしておくと、
早い話が357マグナム弾を装填すると、弾薬の先っぽがシリンダーから
「こんにちわ」
してしまい、撃てません。発射不可能です。
前の時にもお話ししましたが、
そもそも357マグナムというのは特殊な弾薬です。
発射薬(パウダー)を増量すれば、飛んでいく弾も威力を持ちますが、
その分、銃本体にも負荷が掛かります。
ここだけの話(マニアは知ってる方も多いですが)、
次元大介が持つコンバットマグナム、M19
357マグナムの連続使用には耐え切れません。
M19は世に出てから多くの米国警官が使用していたのですが、
そこで立証されたんですね。
マグナム弾を撃ち続けると本体が歪んできたそうで。
……誤解を生みたくないのでちょっと解説しますが、アメリカのお巡りさん、大抵の方は実際の現場で発砲したりしません。日本のお巡りさんより遙かに射撃場で撃つことが多いだけです。その時にマグナム弾を撃ちまくって……という経緯です。
その後、S&Wが「357マグナムを撃ちまくってもオッケー!」という触れ込みで世に出したのがTVドラマ『あぶない刑事』で舘ひろし演じる鷹山刑事の持つM586です。M19より一回り大きいフレームになってます。
話は続くよどこまでも。
自分がM10を好きな理由。その一つは、
このリアサイトなんですよ。
日本語では『照門』とも。
フレーム上部に溝を掘って拵えてありまして。
このシンプルさが好きなんですね。
後のリボルバーになると『アジャスタブルサイト』と言いまして、調整ができるごつい品が載るようになるのですが、
だって拳銃ですよこれ。
有効射程は長くて30メートルで、
日本警察の場合では『拳銃使用の際の距離は5メートル以下の実績』って数字出してるんです。
軍や警察が銃を持つ、その本来の使い方は、
長い距離のむこうにある紙の的ではないのです。
アジャスタブルサイトなんて調整がきく割にごつい張り出しになる品よりは、
取り出しの際に引っかからない、このようなフレーム内蔵の照準器の方が向いてます。
グリップ部分。
この品はモデルガンで復刻版で廉価版ですけんねー……、
という妥協も少しはありつつも、自分としては大満足。
茶色の部分は木じゃないの?
ええ、木じゃありません。樹脂製です。
ですが、拳銃のグリップにこの色の樹脂製部品をあてるのはWWⅡ中の軍用拳銃では当然の仕様でもありました。あー、言い方変えるとデフォです、デフォ。
米軍のM1911や独軍のP38などはその好例ですね。
グリップ部分の前に握る際の追加部品が装着されてますが、
これは『グリップアダプター』または単純に『アダプター』などと呼ばれます。
握りやすいように追加された部品ですね。
後になるとグリップ自体が大きくなって、このアダプター部分もグリップ本体に置き換わられます。
個人的な好みとしましては、グリップはこのサイズで。アダプターはなくてもいいかなー、とは思います。銃の設計に『人間工学』という概念が取り入られる前の時代の品ですね。
ちゃっ!
シリンダーをスイングアウト(と、いいます)した状態。
リボルバーはオートマチックとは違い、
見た目のかわり具合というか、ギミック要素が少ないです。
手のひらで転がして遊べる要素、
その楽しさのひとつには、やはりシリンダーのスイングアウトがあるのではないかと!
そんなわけでこんなわけで。
まとめに入りつつ。
ここしばらくといいますかなんと申しますか。
リボルバーはずいぶん触っていなかったんですね、自分。
興味の方向はおおむね古めのオートマチック(自動拳銃)ばかりだったので。
今回の品はコクサイが復刻廉価版を出したと知った時から狙ってました。
骨董屋さんで調達してきた同社製のチーフスがなかなかに良かったので。
ただ、
イマドキのエアソフトガンと比べてしまいますと、
うーん、
多少の見劣りはします、正直。古い品ですから。
手に取って持ってみて軽いですし、質感も取り回しも……イマドキの品と比べたら、というところでもあり。
でもやっぱりなあ。
チビッコ時代はショーケース越しに輝いていた逸品です、コクサイのモデルガン。
うれしくはありつつも、
やはりモデルガンは趣味嗜好の品としては先行きがあまり明るくないのかもなあ、みんなエアソフトガンだものなあ、などと思ってみたり。
去年はハドソン産業が廃業しましたし、MGCはとうになく。
コクサイもいつまでなのか……。
ま、ディープに話してたらキリがないので、ここはひとつ。
調達の際、相談に乗っていただいた
明和模型さん、ありがとうございました!
うん。