とある春の夜の銃器談義

もしくはとある春の夜の書籍紹介。神沢です。




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エリア51(3) 久正人 新潮社 バンチコミックス


世界中の異形をかき集め、隔離した人口過密な「無人地帯ノーマンズ ランド
アメリカ51番目の州 『エリア51』
住んでいるのは神様、妖怪、宇宙人にUMAからサンタさんまで。
人間ではないモノと、人間の世界にはいられなくなった人間達が織りなす、
ハードボイルドな世界です。


いやー、かっこいい。


読んでいてぐいぐい引き込まれます。
主人公は女探偵、マッコイこと真鯉徳子まごいとくこ
彼女が操る曰く付きの拳銃がこのM1911です。
M1911A1ではなく、初期のM1911ですね。


彼女の決闘相手となるホムンクルスが操るのは旧日本軍の二十六年式拳銃だったり、小道具も街並みも世界観そのものがすべて『ごった煮』いわゆるメルティングポット、坩堝です。その世界観がなんとも言えません。



大好きです。
大好きなのですが、
今回、この3巻でちょっと気になるシーンが。
作者である久正人さんの揚げ足を取るわけではないのですが、
どうしてもそこだけは気になりまして。




とあるシーン、
マッコイがM1911に特製の弾薬を1発だけ装填するシーンがあるのですが、


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1911系は排莢口から弾薬を装填してはいけません。


ほとんどの自動拳銃ではできるのですが、
1911系でもやってできないことではないのですが、
「やってはいけないこと」の一つです。


1911系のエキストラクターは動きません。
それが理由だからなのですが。
ええと、どう説明すればわかりやすいか……。


……撮りましょうか。
撮りました。


1911系は内蔵されているので代用として別の品にて。


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薬莢の底の部分って、リム(フチ)がありますよね。
リムド、リムレス、セミリムド、言い方はいろいろありますが、
コレがなんのためにあるのかというと、


射撃後の空薬莢を排出するためです。


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ペン先下の、小さな四角い部品。
リムに噛んでいるのが確認できますでしょうか。
これがエキストラクターです。
薬室(チャンバー)から、薬莢を引っ張り出します。



本来、弾倉からの装填では
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弾薬は下から押し出されてスライドして動き、
エキストラクターがリムを噛みます。


銃も種類によっては、
このエキストラクターがバネ仕掛けになっていて、
スライドしなくても真正面からリムに噛むモノもあります。


1911系はエキストラクターが固定なので、
弾薬が弾倉からスライドして送り込まれないと、
エキストラクターがリムを噛まないのです。


エキストラクターがリムを噛まないままだと、


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こうあるべき姿が


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こうなります。


『閉鎖不良』と呼ばれる現象ですね。
当然ですが、撃てません。



この時に力技を通せば、遊底(スライド)をガチャガチャやって無理に弾薬(アモ)を薬室(チャンバー)に押し込めばどうにかなりますが。


………。


弾薬のリムが破損するだけならまだイイ方です。
もし銃本体のエキストラクターがゆがんで破損したら。
次弾は発射できず、射手は戦死フラグ確定です。
戦場は前線で休憩中に恋人からの便りや写真見て「コレが終わったらオレ……」以前の問題です。



ですが、


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『この一発で決めるんだ』


マッコイのその心意気が読んでいて気持ちがイイです。



この物語を編んだ久正人さんに対して、設定面でちくちく言うような、
そんなケチなまねなどはしたくありません。


大好きなんですよ、『エリア51』


ただ、
マッコイのM1911と実際のM1911は違いますので。


本に書いてあったからって、
ネットで読んだからって、
それ全部鵜呑みにして信用しちゃダメですよ?


ご自身の五感を大切にしてください。
そしてその五感の、
日々の錬磨もお忘れ無きよう。





うん。