冬山支度
お勤め先にて、貨物系運転手は車両格納庫にて。
「かんざわー!」
はーい。
「持ってきたからー、着てみろー」
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お勤め先は冬山に滑りに遊びに赴くイベント、
あさってです。
『神沢は、ウェアとか道具とか持ってんのか?』
『いえ、ないです。いつもレンタルです』
『金かかるだろ』
『ええ、もう買った方が安いくらいになってるんで考えてるんですけど……』
『……俺の、かしてやるからそれで行け』
『えーっ! いいんですかーっ!』
おかりしました。
レンタルの品と違います!
きれいです!
軽いです!
ふわふわです!
『ここにリフト券入れる』
『リフト券入れるところも付いてるんですかー! 最近のはすごいなー!』
『これ、二〜三年前のヤツだぞ……』
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そして今回の『見る前に跳べ』
同行の先輩から。
スノーボードにデビューしてゲレンデ経験は幾ばくかの先輩。
『マサミチ〜、ボードやろうよ〜』
『や、自分はスキーしか知らないんで、スキーでいこうかなと』
『一緒にボードやろうよ〜。道具とかかすからさー』
きゅぴーん、と光る自分の瞳。
『……かしてくれるんですか?』
『俺の分の他に一式余ってるから』
『やります!』
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ええとですね、
今回絶対ひどい目に遭います。
それ確実。
スキーだってろくに滑れません。
初級ゲレンデ、チビッコ達がファミリーで遊ぶゲレンデをようやく乗り越えて、
中級ゲレンデがようやく降りられるかなあ……、
あ、やっぱだめ、泣きそう。
スキーでそんな自分ですからスノーボードでなにができるというのでしょうか。
すごく大ピンチ。
でも、裏返せばすごく大チャンス。
やったことがないんだからやってみる価値はある。
想像の自分、
白銀の世界で、
ざしゅっ!
ずばぁっ!
かっこよく舞う自分を想像してみたりして……。
「神沢さん、ついに辻斬りの人に……」
そっちの音じゃないよ。
ええと、
初心者用の講習とか受けてきたいなと思います、スノーボード。
二時間とか三時間とかのレッスン料金は三千円とか四千円とか。
服も板も靴も、全部が全部好意無料の借り物なので、
『せっかく行くんだから、ボードデビューするんだから、レッスンきちんと受けてきなよ』
ウェアをおかしいただいた大先輩からいただいたコメント。
……滑れるようになりたいなあ。
うーん、
齢(よわい)が30を超えたとはいえ、
やはり知らない世界は怖いものです。
でも、
やってみないとわからないこともあるものだから、
やってみる価値はありますよね。
そう思うのです。
うん。