クラッチ修理記

命懸けで帰宅しました。神沢です。


我が仔、ニッサン・エクストレイルですが、


確実にクラッチが摩耗してます。


アクセルを踏み込むとすぐにすべってしまい、
あれあれどうしたことでしょうかと。



クラッチがすべるとはどういうことかというと、
ギアを入れてクラッチを繋げ、アクセルペダルを踏み込むと
エンジンの回転は上がるのですが、
スピードが出ない、加速してくれない状態です。


具体的には自分、
ロー発進1500回転でクラッチを繋げるのですが、
半クラッチ状態が続いて入るようなモノで、
そのままペダルを踏み込むとオートマ車でいうクリープ現象くらいの出だしで
3000回転くらいまで上がっていきます。
はたから見てると
チビッコさんのかけっこくらいの加速です。


それでもなんとか我が仔をなだめすかしつつ、速度を上げていくと、
5速、2000回転で時速60キロまで上がりますから
「つながってることはつながってますね」というあんばい。


ただ、
ディーラーさんにも電話で言われたのですが、
「いったんすべり始めるとどんどん摩耗していくので早めに修理に出してください」


ええ、加速的にすべっていってます。
このまま行くと発進しなくなります。


そんなこんなで本日お勤めは出勤してすぐ先輩に相談。
自分、職業運転手ッスから。
「どこか安いところありますでしょうか」
「(エンジンやミッション周りを)下ろすことになっから……どこ持ってってもあんま(値段は)変わらねど?」
板金だったらどうにかなんだけんどなあ……、とのこと。


お勤め先のコネクションは人の繋がり、
間に立っていただいて地元のとある車屋さんに相談。
安くできませんでしょうか……。
「……どうでしょうか?」
「神沢クン、あそこもディーラーとたいして変わんねって。ディーラーに持ってけ」


はあ、
急な出費でじゅうまんえん越えですか、
痛いなあ……。



………ん?
んんん?


知古にある業者さんがもう一つありました。
自分、貨物系職業運転手ッスから、
担当する取引先に自動車整備工場があったのを思い出し、
しかも本日納品予定ありです。





「どもー! 神沢ですー! ………あの、ちょっとご相談なんですけど」
「ええ、どうしました?」
「かくかくしかじか。というわけなんです」
「うーん、FFの四駆ですよね……」
「ええ」


一部のFR車ならミッション部分だけ下ろせますからそんなに工程はないんですよ。古いヤツとか。ただイマドキの車となるとミッションだけってわけにはいかなくて、エンジンと駆動系も一緒に下ろさないとミッション部分が解体できないんです。ミッション部分の解体と部品交換はたいしたことじゃないんです。ただそのために発生する作業っていうのがずいぶんとあるんです。たとえば……こないだオイル漏れでマークⅡが入庫したんですが、原因はミッションのパッキンでね。部品そのものは三千円とか四千円とかそのくらいですよ。だけどそれ交換するためにエンジン周り全部下ろさなきゃならなくて……作業時間10時間超えてて工賃8万円です。いやあ、部品代は三千円程度なのに工賃で8万円だったから請求出すのに心苦しくて……クラッチ交換だと、多分部品は三万円とか四万円とかそのくらいなんですけど、下ろしの方で工賃はかかりますねえ。ディーラーさんもそのあたりを言ってたんじゃないかな



はい。
ここまで聴いたら安くしてくれとは言えないです。


「神沢さんにはお世話になってますから、ディーラーさんより安くあげますよ?」


ああ、ありがとうございます。
しかし自分も現場主義の人間ですから、
安くしとくれの一言で現場の方に迷惑のかかる注文はできないですよ……。
その後車検証のファックスを送り、ひとまずは頭をお勤めモードに切り換えて誠意勤労。お仕事は大事ですよ?


「神沢、お前あそこに見積もり頼んだの?」朝の先輩です。
「ええ」
「やってくれっかもしんねぇけど、代車無ぇかも知んねぇぞ」
「えええええ」
たしかに。
ええと、大型車の整備工場なのです。
観光バスとか長距離トラックの扱いを専門としている整備工場さん。





夕刻。
携帯に着信。はい神沢です。
「9万円です」
「きゅうまんえん!?」
それおかしくないですか部品が4万円工賃が見込み8万円でどう見ても12万円ですけれど。


「うちのパソコンで作業と金額の見積もりだしてみたんですけれどもね?」
ああ、それ入ってるんですか。
自分も存在だけしか知らないのですが、車両の修理方法や整備方法、それに関わる必要部材や経費などを試算出来るネットがあるのです。ディーラー各社さんには入っているようなのですが、自分たちお客さんが知らないのは営業さんが触らないから。メカニックこと整備士さん達のツールなのです。
「下ろさないでやれるみたいですよ?」
「ディーラーさんには下ろさなきゃできないって言われたのですが……」
「んー、たしかに下ろした方がやりやすいかも知れませんねえ。ですが見積もりだと下ろさないでやる方法になってるのでこれでやりますよ」
「……ホントに自分の車ですか?」
「ええ、車検証の通りで調べましたよ?」
「おねがいします!」
「はい」


「……相談が」
「? どうぞ?」
「あの、代車とかお願いできたらと思うんですが」
「ああ、ありますから大丈夫です。軽なんですがいいですか?」
「走ればなんでもいいです!」
「今全部出払ってて……明日一台帰ってくる予定なんですが、むこうのお客さんの予定もあるので時間がちょっとわからないんです」
「では夕方くらいにお伺いすれば大丈夫でしょうか」
「はい。もし早く戻ってくればその時点でご連絡しますから」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」



と、いうわけで、


我が仔、ニッサン・エクストレイル、
入院させて帰宅する予定がそのまま連れ帰ることに。



すごく怖かったです。



なにしろクラッチは摩耗する一方ですから、
アクセルペダルを踏み込むたびに回転数が上がります。
それってつまり、クラッチがだめになっていっている証拠。


いつ動かなくなるかがわかりません。
ひたすらクラッチのすべりを押さえた運転で。


「神沢、お前帰れるのか?」
心配してくれた先輩からは必殺技の運転方法を教えていただきました。
ダンプトラックの運転方法が乗用車に通じるのかどうかはわかりませんが(先輩は元ダンプ乗りさんです)


いのちからがら、帰宅な本日。


本勝負は明日。
自宅から整備工場までは、
おねがいですから、


保ってください! クラッチ



そんな日のこと。



うん。