止まらんと……困る!

あのテレビコマーシャル、お巡りさんがこう告げるラストもありました。神沢です。



調達しました。


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タナカのモデルガン
S&W M1917です。
かなりイイお値段だったのですが
さながら気持ちは清水の舞台からヒモなしバンジージャンプ


昨今の遊技銃市場ではマイナーな機種ですが、
実は日本人にはなじみの深いモノだったりします。
かつての日本のお巡りさんが装備していたのですね。
元は米軍の制式採用拳銃だったのですが、
戦後、アメリカから日本の警察用に大量に払い下げられました。
ニューナンブM60が採用され、順次入れ替わりが終わるまで使われ続けました。
自分も十代の頃、お巡りさんが腰に提げているのを観た覚えがあります。
ニューナンブと違い、ものすごく大きいことと、ホルスターに蓋がないのでグリップやフレームの一部分が見えるのでした。
(そのニューナンブも今や新規のS&W M37に入れ替わりが始まっていますから、結構昔の話ではあります)



実物について説明を申し上げますとM1917
歴史は古く第一次世界大戦にまでさかのぼります。


当時米軍はM1911(いわゆるコルト・ガバメント)を制式拳銃として採用していたのですが第一次世界大戦がはじまり、その生産が追いつかなくなっていきました。
コルト社とS&W社に拳銃不足を補うべく、発注したのがM1917です。


というわけでM1917
実は二種類あります。
コルト社製のモノとS&W社製のモノ。
両者は米軍にて同じ呼び名、M1917として納入されましたが、
実際には全く違う別のモノです。
http://en.wikipedia.org/wiki/M1917_revolver
↑米国Wikipedia 1枚目の写真に用いられている方はコルト社製ですね。


今回のタナカのモデルガン
こちらはS&W社製ですので、そちらについてお話ししていきますと、
もともとS&W社、イギリス軍向けにリボルバーを製造し、輸出していました。
『ハンドエジェクターリボルバー』という名前だったのだそうですが、
自分も詳しくはわからず……未熟者です。すいません。
それが第一次世界大戦によって米軍から発注を受け、
米軍向けに改修して納めたのがこのS&W社製のM1917です。
大きな違い、というか自分はそのことしか知らないのですが、
米軍の要求に合わせて使用弾薬を変えています。
英軍の拳銃用弾薬『.455弾』から
米軍の拳銃用弾薬『.45弾』へと。


『.455弾』はリボルバー用のリムド弾薬でしたが、
『.45弾』はM1911に使用されていたリムレス弾薬。
(リムド、リムレスの違いについてはこの場の今年8月4日の記事、
『弾薬談義』http://d.hatena.ne.jp/unworthy/20110804/1312463284
このあたりをご参照ください)


リムレス弾薬をリボルバーのシリンダーに入れたら
リム(薬莢のお尻、その外側に出っ張ったフチ)が無いため、
すぽん、とそのまま先に抜け出してしまいます。


どうするか?


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クリップで留めました。


こうすることでM1911と弾薬補給が一本化で済むことに。
こういった発想の仕方はさすがアメリカだな、と思います。
第二次世界大戦中、拳銃弾はおろか、小銃、機関銃まで弾薬の規格がばらばらでまちまちだった日本軍とは発想が雲泥の差です。
悪く言いたくはないのですが日本軍、
さすがこの面においては比較して有利に見える部分がありません。
悲しいけどこれ戦争なのよね。


戻りましてS&W M1917
S&W社製のリボルバーはすべて統一規格がありまして、
それに準拠して作られています。
基本となるのはフレームの規格でして、


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左:Jフレーム(M36 チーフスペシャル)
中:Kフレーム(M10 ミリタリー&ポリス)
右:Nフレーム(M1917)
です。
Nフレーム規格で名が知られているのは皆さんご存知、
映画『ダーティーハリー』のM29
いわゆる44マグナムですね。


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Nフレームに載せられた45ACP弾対応のシリンダー。でかいです。
45口径という言葉は
『0.45インチ』つまり11.4ミリということですから
38口径
『0.38インチ』つまり9.652ミリ
シリンダーのサイズとしては遙かにおおきくなります。


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いかにシリンダーが大きいかとわかる一葉。
新旧日本のお巡りさんの腰回り事情。
今では写真右(最新はM36の計量化版M37“エアウェイト”となります)ですが、
かつては写真中のM1917だったんですね。


私見ですが、
お巡りさんの
「止まれぇー! 止まらんと撃つぞー!」
の台詞は、この品が似合うと思います。
マニアックですね。
にひ。



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M1911と比べてもわかるこの大きさ。
M1911自体、大型拳銃に分類されますがそれよりも大きいです。


ん?
当時の拳銃でM1911より大きいと言えば……。


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日本の十四年式!
ですよねー。


細身なので意外に思われるかも知れませんが、
実はかなり大柄です。十四年式。


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S&W同士 M10との比較。
薄い!
手に持った印象。


大きさそのものはNフレームなのでそれなりにありますが、
グリップの薄さは印象に残ります。
操作して気になるという程ではないですね。
自動拳銃(オートマチック)で例えれば、
ダブルカラアムマガジンの品を握ったあとにシングルカラアムマガジンの品を握った印象に近いでしょうか。
ベレッタM92FのあとにM1911を握るような。


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ファイブスクリュー。
ペン先で示したネジのことです。
サイドプレート(機関部を納めている蓋)の留めネジ、
今では3本で留めていますが、
かつてのS&W社製リボルバーはこの位置にネジがありました。
この位置にネジがある品はトリガーガード前方にもう1本ネジがあります。
合わせて5本。
ゆえにファイブスクリュー。
並べた他の品、M10やM36にはありませんね。
後世不要になったため省かれた部分ではあるのですが、
自分のような好事家にとっては思わずにやりとしてしまう存在です。
まあ、軍用銃としては部品点数が少ない方がいいんですけれども……。



日本のお巡りさんが使っていたことでも知られていますが、
それより有名なのは銀幕ですね。
映画『インディ・ジョーンズ』で主人公が使用していたのがこれです。
ですが、シリーズによって違っていたりもします。
中折れ式のリボルバーを使っていたこともあるので
(ウェブリーと呼ばれる品で、ラピュタムスカ大佐が使っていた品のご先祖様にあたります)
インディシリーズは人気があるので、彼の革ジャンや帽子、拳銃など考察されているサイトさんはさまざま枚挙にいとまがないのですが、
こと拳銃に関して、自分なりの観察眼では、
「……テケトーでいいんじゃない?」と。
インディシリーズに出てくる拳銃のうまみ。
あくまで私見ですが、
屈強な戦士と対峙して抜こうと思ったら腰のホルスターに入っていなかったり、
市街地は移動する車で撃ち合いしていて弾を交換してもらおうと渡したら銃そのものを車外に落とされてしまったり、
『要るときに、ない』
それが、
インディシリーズの銃のうまみかと。





長くなりましたのでそろそろまとめに。


20111220202734


古い銃がね、好きなんですよ。


イマドキの遊技銃専門店さんにお伺いすると、
まーあります。
照明や光学照準器などのごてごてしたアクセサリーを載せた高価な品々。
それが悪いとは決して言いませんが、
そのいいところも重々承知ですが、


自分はね、
古い銃がね、好きなんですよ。


とはいえ、
先込め式の単発銃までには及びませんが。


持ち物は人が使う道具ですから、
その持ち主のそのときの心境が好きなのです。



「止まれぇー! 止まらんと撃つぞー!」
もし撃っちゃったらその後報告書とか書くの大変じゃないですか。


D
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2119428
こういうのが好きなんです。




うん。